アルコール依存症
お酒が飲みたくて仕方がない。飲み始めたら止まらない。お酒が切れると汗が出たり、手が震える。若い頃よりお酒の量が増えた。体のことを注意されても飲んでしまう。このような症状があればアルコール依存症かもしれません。
友達や会社の付き合いで飲んでいたお酒。お酒は”耐性”ができてしまう薬物です。そのため最初の頃に酔えていたお酒の量では酔うことができなくなり徐々にお酒の量が増えていきます。アルコールに長期間暴露されると、お酒を飲んでいることが普通になり、仕事中にもお酒のことを考えたり、飲んでいはいけないときにお酒が欲しくなったりする「渇望」という精神状態になります。さらに手の振るえや発汗などの体の症状がでてくる「離脱症状」が生じるようになってしまいます。このようにしてアルコールに対するコントロールができなくなった状態を「アルコール依存症」といいます。
アルコール依存症になってしまうと様々な体の異変が起きてしまいます。みなさんのよく知っている「アルコール性脂肪肝」だけではありません。「肝硬変」やそれに伴って起きる「食道静脈瘤」の問題もあります。さらに一番はアルコールによって脳がダメージを受けて「認知症」になってしまうことです。
アルコール依存症になると心の問題も生じてきます。うつ病や不安障害を合併したり、お酒が切れることでイライラしたり、眠れなかったりします。うつ病になるとやる気が無くなります。お酒の問題を隠すために嘘をついたり、ちょっとしたことで家族へ暴言や暴力となってしまうこともあります。
アルコール依存症は回復可能な病気です。ですが回復するまでの道は平坦ではありません。お酒をやめ始めたときにはアルコール離脱症状との戦いがあります。治療によって断酒を始めても、世の中は飲酒機会で満ち溢れています。再飲酒(スリップ)すれば元の木阿弥です。病院や仲間と支え合いながら断酒の生活を目指しましょう。
アルコール依存症は
- 誰でもなりうる病気です
- 慢性に経過する病気です
- 姿を変えていく病気です
- 死に至る病気です
- 周囲を巻き込む病気です
日本はアルコールに寛容な国ですので、「このくらい誰でも飲んでいる」と思いがちですが、放っておくとご本人だけでなくご家族も大変な状態になってしまいます。「ちょっと飲み方がおかしくない?」と思われたら、早めにご相談ください。
ギャンブル依存症
途中で辞めるとイライラする、負けると次の日に取り返そうとする、ギャンブルのために嘘をついた、仕事や人間関係に問題が生じた、借金返済のためにお金を借りる、このような症状があればギャンブル依存症かもしれません。
全国に生涯でギャンブル依存症が疑われる方は320万人いると言われており、男性の6.7%、女性の0.6%と推計されています。しかしこのうち病院で診断を受け、治療を受けている方は4000人以下とされており、ギャンブル依存症は借金の問題であって病気と捉えられていない側面があります。
アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5ではギャンブル障害(依存症)を以下のように規定しています。
- 賭け金を増やす
- ギャンブルを中断するかやめるとイライラする
- ギャンブルをやめようと思ってもやめられない
- ギャンブルに心が奪われている
- 嫌な気分をギャンブルで晴らそうとする
- ギャンブルで失ったお金を取り返そうとする
- ギャンブルののめり込みを隠そうと嘘をつく
- ギャンブルのために人間関係や仕事や教育機会を失った
- 借金がある
ギャンブル依存もアルコール依存や他の依存と同じように脳内報酬系の異常が原因の一つと考えられています。ギャンブルをすることで脳内で過剰なドパミンの放出がおき、繰り返しギャンブルをしてしまうのです。ギャンブルへののめり込みが強くなると脳の機能異常によって少々負けたくらいでは脳の反応が乏しくなってしまい、ハイリスクハイリターンを求めるようになってしまいます。さらに前頭前野の働きが低下することでギャンブル以外への興味関心がなくなってしまうこともギャンブルへののめり込みを助長してしまう要因です。
ギャンブル依存症への特効薬はありません。認知行動療法や自助グループへの参加や家族のサポートなどが行われます。しかし、残念ながらギャンブル依存症は再燃(スリップ)してしまうことも特徴です。スリップしてしまう理由は様々です。「もうちょっとくらいやっても大丈夫だろう」という病気に対する認識の甘さ以外にも、ギャンブル以外の興味がないことでふとした時間を有効に使えずにギャンブルしてしまう、借金問題を早期に解決したいとの思いから再びギャンブルに手を出してしまうという方もおられます。
当院では外来治療、入院治療、GAを含めた自助グループへの参加支援、公的機関との連携などを図りながらギャンブル依存からの回復をサポートしています。
当院ではギャンブル依存症への対応として外来でのSTEP-Gと自助グループGAへの参加を勧めています。STEP-Gは第1、3土曜日の9:30〜10:30に行う全6回のプログラムです。また当院にはギャンブル依存症から回復し看護補助者として勤務している方(2CAP)がおられます。当事者から具体的なアドバイスなどももらえますよ。ギャンブル問題でお困りの方はぜひご相談ください。
インターネット・ゲーム依存症
ゲームの時間を制限できない、制限するとイライラする、予定よりも長くゲームをしてしまう、仕事や遊びの用事を犠牲にしてゲームをしてしまった、嘘をついてゲームをした。このような症状があればインターネット・ゲーム依存症かもしれません。
オンラインゲームやSNSへの過剰なのめり込みがネット・ゲーム依存症です。2008年には275万人と推計されていましたが、2013年の調査では421万人と大きく増加しており、社会問題となっています。
ネット・ゲーム依存の特徴として中学生や高校生の割合が多いことが挙げられます。中学生頃から持ち始めるスマートフォンの利用がオンラインゲームやSNSの利用を促進しているからだと思われます。また中学生や高校生の頃はまだ成長発達段階であり、大人と違ってコントロールする能力が十分発達していないことも原因の一つかもしれません。
オンラインゲームやSNSにハマる原因は様々です。オンラインゲームによってネットの向こう側の人たちと繋がり孤独感が解消されたり、ゲームの中で役割が得られることで責任感やアイデンティティも獲得できるのでしょう。ゲーム内のイベントを他のプレーヤーと一緒にクリアすることで達成感も得られます。これは日常の生活の中では得難い経験です。特にコミュニケーションが苦手な人にとってはネットの世界は非常に都合のいいところなのです。
しかし、ネットに夢中になりすぎると体に様々な影響が出てきます。同じ姿勢で長時間モニターを見続けるために目が疲れたり、肩がこったり、そのせいで頭痛がしたり。オンラインゲームは夜に参加することが多いために昼夜逆転の生活になり、陽の光を浴びないことで発育不良にもなります。
また長時間ゲームを続けると、心にも悪影響が生じてきます。ゲームをしていないとイライラしたり、ゲーム以外のことへ興味がなくなります。昼夜逆転の生活で寝不足から日中ボーとして勉強や仕事にも影響が出てきます。当然成績が下がってしまうので自己評価が下がり、ひどい時にはうつ状態になることもあります。
インターネット・ゲーム依存症は中高生が多く、不登校・引きこもりといった2次的問題が生じてきます。もともと学校に不適応気味であった子供が、インターネットに居心地の良い場所を見つけてしまい抜け出せなくなってしまいます。一度ゲームにハマってしまうと抜け出すことは大変です。制限しようとすると暴力につながることもあります。ご本人が受診を拒まれることも多いですが、ご家族だけのご相談も受け付けておりますので、精神保健福祉士までご相談ください。